B2Bベンチャーのススメ

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こんにちは、堀(@jojihori)です。

最近、ここここなどで、自分がシャノンに来てやったことについて振り返る機会があったので、ちょっと文章として書いてみようと思います。主にこれからB2Bの中でなんかやってみようとかそういうベンチャーに行ってみようとか思う人向けです。

ちょっぴり長いです。まったくもって技術ブログじゃないですね...


■Oracleからシャノンに


僕がシャノンに来たのは2005年末なのですが、前職ではOracleでアプリケーションサーバのエンジニアをしており、後半3,4年ぐらいはアプリケーションサーバ(アプリケーション開発支援ツールや、J2EEコンテナを担当してました)のメンテナンス部隊で日本を含めたアジアやヨーロッパ向けの障害解析やパッチのコードを書いたりしていました。

その時に、「こんなにWebサービスが流行っているのに、パッケージソフトなどは絶対なくなる。しかも、自分の仕事は5バージョン同時にソース管理して鵜飼みたいなことをやってるなんて不毛すぎる。これからはビジネスでもWebだ、Webをやろう!」と心に決めて、いろいろ探していたところに今の副社長と企業評価価値の算出方法を教えてくれるセミナー(の夜の飲み会)で知り合ったのがきっかけです。

どこに出会いがあるかわからんですね。


■初期バージョンの開発


シャノンに入った当時は、ちょうどティム・オライリーがWeb2.0を言い始めていたころで、入社した僕はこれからはこれだ!ということで、その時やっていたイベント管理のASP&個社別カスタマイズをWebサービス化、つまりソースコードを一本化して今で言うマルチテナント方式で開発しようと思い企画をたてていました。

初期バージョンを作った直接的なきっかけは、Salesforce.comでAppExchangeという「iTunesで音楽を買うみたいに、業務アプリケーションを買えるようにしよう!」という素晴らしい仕組みをアメリカに続いて、日本でもローンチするからその最初のベンダーにならないか?というお誘いでした。

サービスコンセプトが魅力的な上に、自分がやりたかったことに合致してましたし、当時、Salesforce.comはすでに日本でもグイグイ来てるベンダー(に僕の目にはうつっていました)で、「これはいけるに違いない!きっとすごく売れるかも」という甘い期待をしていました。。。


■リリースはしたものの


数カ月間、それこそ休みもとらず正月や大晦日も返上でリリースをどうにか間に合わせ、リリースしたのが今の初期バージョンです。

しかし、リリースして「あれだけちゃんとしてるSalesforce.comがかついでくれるのだから売れるのではないか!?」と思っていた僕は、それが壮大な勘違いであることに気づきました。。連携サービスの使い勝手とか、利用者のターゲットとか、個別の理由はたくさんあるのですが、結局のところ「もしかしたらSalesforceさんがなんとかしてくれるのかも」という甘えがあったということにつきると思います。結局のところ使う人がどういう人なのか、その人の課題はどうすれば解決するのかという視点が少なかったのが原因で数年間鳴かず飛ばずでした(ちなみに現在は引き合いはたくさんいただいています)。

その後も、特に事業の立ち上げ初期ですが、提携しましょうとか、一緒にやりましょうというお話をありがたいことにいろいろいただきました。ただ、やはり提携パートナーのメリットにならなかったり、自分たちの力不足でパートナーが抱えている顧客を満足させることができなかったりと、うまくいった提携は少なかったと思います。振り返ってみると課題を解決する意識がやっぱり薄かったのかなと思います。つまり提携する企業のその先にいる顧客の課題があまり見えてなかったなと。


■増え始める売上と破綻していく開発


しばらくして、製品が少しずつですが売れるようになってきました。

営業のがんばりもあり徐々に導入件数が増えてきたのです。

しかし、それとともに製品に対する要望も指数関数的に増えていくことになります。最初はツールを使って要望リストを管理していたのですが、それも追いつかない、というか管理しても要望の数に対して自分たちが実装できる機能数があまりにも限られていて管理することに意味がなくなってしまいました。

また、そのころはアジャイル風味のウォーターフォール、つまり気合いと根性で常にリリースしていたため、開発のプロジェクトは次第に破綻をきたすようになり、品質の低下や、機能が長期間リリースできないという事態を招くようになっていました。

ビジネスのスピードをさらに加速させていくためにも、開発のスピードと品質という、一見すれば相反する要望をどうにかして同時に叶える必要がありました。

つまり開発プロジェクトに対する考え方を変える必要があったのです。





■アジャイル開発への切り替え - Scrumの導入


元々、アメリカのベンダーでエンジニアとして働いていた私は「エンジニアとしての能力に日米でそんなに差がないと思うのに、なぜ日本のソフトウェアは売れないんだろう」とか「日本ではなぜ製造メーカーだけが世界で戦えるのだろう」ということにすごく疑問を、というかものすごく不満に思っていました。同じ人間なのに自分達だけできないわけがないと。

TOYOTAの開発手法を調べたり、シリコンバレーでの開発手法を調べたりするうちに、そのころ少しずつ流行りだしていたアジャイル開発が自分たちにあっているのではないかと思うようなり、2009年初頭からScrum(とすでに取り組み初めていたCI系の技術等)を採用し、「えいっ」って一気にプロセスを変えました。

この取り組みは思いのほかうまくいき、開発のデスマーチや大きな不具合が従来に比べると激減し定常的にアウトプットが出せる開発チームに変貌していきました。

これは言い換えるとビジネスの変化に定常的にあわせていけるようなチームになっていったということであり、B2Bの中では動きの速いイベント、マーケティング業界では非常に重要なことでした。




■何がもっとも大事なのか?


そんなこんなで少し開発プロセスは安定しはじめたのですが、相変わらず要望の数はすごい勢いで増えていきます。

そうなると常に考えるのは

「本当に必要な機能はなんだろうか?」
「そもそも他に機能が必要なんだろうか?」

ということです。今でもそうですが、これは非常に深い問題で、やはりその会社や組織、製品がなんのために存在しているのか、というところに考えると帰着していきます。

が、そもそもそんな高尚なことを考える時間的余裕もあまりなかった我々は、もっとストレートに

「お金を払うほどの価値がある機能はどれだろう?」

という目線で新機能を開発する項目を決めていくことにしました。営業的な表現をすれば「売れる機能」です。

そういう目線でいろいろな要望リストに目を通していくと、大部分の要望は「いいね!」とはなるものの「お金を出してまで解決したい課題」を解決しているものはそんなには多くはなかったのです。



■大企業への展開


上記の結果、他の汎用的な競合ツールに比べて、イベントやセミナーに特化したニッチな機能が増えていき、我々しか解決できないエリアというのができてきました。

もともとSaaS型で展開しはじめたときは「製品価格を安価にして、日本中にある中小企業にたくさん使ってもらおう!」と思っていましたが、

・そもそも中小企業はセミナーやイベントでのマーケティングはあまり必要がない。。
・必要だとしても我々が実装しているような機能はあまり必要なく、安価または無料のツールで充分

という事実に途中で気づきました。結果的にはお客様は大企業や外資系企業ばかりになっていきました。

また、大企業こそマーケティングに対して今すぐに解決したい大きな悩みを抱えていて、我々が活躍出来る場所が多かったのです。

大企業では、パッケージ製品の導入やスクラッチの開発はすぐに大掛かりなプロジェクトになって時間がかかってしまうのですが、弊社のサービスであれば情報システム部を介さずに、Webだけですぐにはじめられるため、現場部門に受けがよかったのです。


■作ったものを売る


先に話したとおり、今の開発リソースですべての要望に答えるのが不可能なのは火を見るより明らかでした。

また、もともと僕が入社した際にも代表の中村と話していたのは「日本のソフトウェアは作る方にばっかり目がいっていて、売る方に注力している会社は少ない。売上に対するR&D比率が低い海外のソフトウェア企業を見習って、営業・マーケティングにもっとコストをかけていくべきだ」ということで、毎年ゆっくりと売上に対する開発比率をさげていきました。なので、リソースが足りないように感じるのはある意味当然といえば当然だったのです。

少ない貴重なエンジニアリソースだからこそ、優秀なエンジニアを採用して育てなければいけないし、開発する機能には魂をこめなければいけない、そして開発したものは全力で売らなければいけない、これは今でもそう考えています。

良いエンジニアがいるから良い製品ができる、というのももちろん正しいと思うのですが、僕はどちらかというと「売れる製品のエンジニアは良いエンジニア」だという風に考えています。Facebook、Google、Mixiなども、中のエンジニアが元々優秀なのはもちろんですが彼らのサービスがあれだけの人々に使われたからこそ凄まじいスピードでエンジニアとして成長できたのだと思っています。

売るのが大事



■B2Bでチャレンジする人へ


B2Cと違ってB2Bは、その業界特有のマニアックな課題の理解からはじまります。そのため、学生さんにはちょっと不利で社会人経験というか特定の業界経験があるといっきにチャレンジする機会が増えます。

僕は、B2Bの場合は特に、いろんなことに「あきらめている」人が多いと感じています。「なんでこんなことができないんだろ。家ではできるのに。」「なに意味不明なこのExcel」「これやったらこの人達だけは超喜ぶのになー」などと、業務のまわりには膨大な数の不満や課題が常にうずまいています。

これはつまりチャンスが山積みということです。

自分が目の当たりにした課題をエンジニアと共に(もちろん自分でもいいですが)解決することで世の中が少しよくなるのです。

そしてその業界特有の課題は他の国にいってもある程度一緒です。

コンシューマ向けの課題は見つかるのも解決されてしまうのが比較的速いため、なかなかビジネス的にチャレンジが難しかったりしますが、B2Bはどこの国にいっても取り組んでいる人が少なかったりするので、日本で業務に熟達してから一気に他の国に行くということも充分可能だと思っています。

そんなチャンスあふれるB向けの世界でやってみたいと思ったあなたは弊社のエンジニア募集に応募していただいてもいいですし、自分で何かはじめる準備をしてみるのもよいと思います。ソーシャルだけがベンチャーじゃないですよ!


こんな日々!?


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1 コメント:

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2012年4月10日 10:31 delete

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

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