BtoB SaaS を支える人を支える〜地味だけど大切なプロダクトマネジメントの役割〜

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※ この記事は Shanon Advent Calendar 2018 の 18日目の記事です

こんにちは。シャノンに複数人いる、おじさんプロダクトマネージャーのひとり、 chappie です。おじさんですが、プロダクトマネージャーとしてはまだへっぽこの半人前です。がんばります。

そろそろ2018年も終わりということで私自身をふりかえってみると、今年はどちらかというと過去にリリースしたサービスの運用面を強化するための取り組みが主な仕事でした。

そういえば、プロダクトマネジメントに関する情報やブログ記事などは年々増えてきている印象がありますが、「どんなプロダクトをどう作るか(企画・開発からリリースまで)」については語られることが多い一方、「作ったプロダクトをどのように提供するか(リリース以降の運用から改善)」という運用面については比較的情報が少ないような気がします。

今回は、プロダクトそのものからは一歩ひいて、BtoB SaaS プロダクトを支える人たちのためにプロダクトマネージャーができることについて少し整理してみようと思います。


サービス体制

BtoB サービスの購買フローは、一般的に BtoC の場合よりと比較して長期化しやすい傾向があり、またその過程でサービス提供を支える人も多くいます。以前書いた記事 ではただ漠然と「様々なステークホルダーがいる」と書いていましたが、もう少し具体的にそれぞれの関係者に対してプロダクトマネジメントの立場から何ができるか記述してみます。

顧客のサービス購入から利用までのフェーズを「プリセールス」「オンボーディング」「ポストセールス」と分けると、それぞれのフェーズで中心となる部門が存在します。



プリセールスのフェーズでは新規担当の営業や、外部のセールスパートナーが販売活動を行い受注を獲得します。
オンボーディングでは導入担当や外部の導入パートナーが、初期設定や必要な周辺ソリューションの構築を実施し、顧客がサービスを利用できるようにします。
ポストセールスではサポート部門や既存顧客担当の営業が、問い合わせに対応したりアップデート情報を提供したり、顧客ニーズの発展に応じてアップセルを提案したりします。

さらに、これらの顧客と直接対話する部門の後方支援として、以下のような役割が存在します。

経理が受注チェックや契約管理を行います
製品運用が、機能やサービスのアクティベーションなどを行います
機能担当開発会社が、問い合わせ対応やログ調査、不具合修正などを行います

プロダクトマネジャーはさらに

各ステークホルダーに対する支援

このような役割分担から、 BtoB ビジネスではプロダクトマネージャーが直接顧客との接点を持ちにくい反面、各フェーズ・各部門に対して支援を行うことで、間接的に顧客へ価値を届けられるようにする必要があります。

プリセールス=販売・新規営業を支える

・サービスや機能の利用イメージや効果、メリットが分かりやすいようにしておく
・利用に必要な条件・制限事項やプロセスが分かりやすいようにしておく
・デモ環境を整備しておく
・申込手続きを整備しておく

オンボーディング=導入を支える

・機能のアクティベーションフローを整備しておく
・他社サービスの仕入れが必要な場合はその手続きを明確にしておく
・導入時のトラブルシュートやFAQをまとめる
・導入開始時の社内手続きや必要な申請・期間などを明確にしておく
・導入時に知っておくべき技術的詳細情報や制限事項を明確にしておく

ポストセールス=運用・継続利用を支える

・運用中のトラブルシュートやFAQをまとめる
・問い合わせ対応のフローや役割を整理しておく
・問題が起きた場合の調査方法や各種ログの見方などをまとめる
・機能の裏のアーキテクチャや仕組みを説明しておく
・開発会社(委託先)が対応できるように保守契約を手配する


人的サービスも含めてプロダクトの価値を届ける

このように、 BtoB SaaS では 営業・導入・サポートなどの人的サービスも含めて「プロダクト」であると言えます。

プロダクト自体の機能や UI を改善して顧客価値を高めることができればベストですが、それには当然大きな開発コストがかかります。 BtoB の世界では特に、顧客のやりたいことが何かしらの方法でできるようになっていることが、実際に購入&継続利用してもらえるかどうかに大きく影響します。

機能の至らない点も含めて、各部門のメンバーにきちんと情報提供できていれば、彼/彼女らも自分たちのミッションやポリシーに則って、最大限の価値を顧客に届けるように努めてくれます。それは単にプロダクトの欠点を埋めあわせてもらうというだけではなく、各部門のメンバーによる付加価値も含めてプロダクト全体の価値を最大化する、と考えることができます。(もちろん、多大な人的コストを発生させたり、事故につながるようなミスを誘発したりするような仕様などは製品として撲滅しておく必要がありますが)

近年、 SaaS ビジネスにおけるカスタマーサクセスの重要性についての認識が広まると同時に、オンボーディングから定着までのフェーズの重要性や、継続利用およびアップセルによる顧客あたりの LTV (Life Time Value)をいかに高めるか、という観点が特に重要視されるようになっています。単に買ってもらって終わり、ではなく、あらゆるタッチポイントが価値を生む源泉となります。

特に顧客単価の高い場合は、ハイタッチ=人的リソースを多く割いて顧客フォローにあたる割合が多くなります。そこに関わる人達をサポートすることが、顧客の成功につながると信じて、マニュアル作成や社内フローの整備などの地味な仕事であっても、着実に実施していくことがプロダクトマネージャーとして自覚しておくべき大事な仕事のひとつかなと思う今日このごろです。

皆さんの力を最大限活かしながら顧客に価値を届けられるよう、今後も精進したいと思います。
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