はじめに
皆さんこんにちは。シャノンでプロダクトマネージャー職を務めております gacky です。
IT・ネット業界で働くこと20年、今年ついに本厄を迎えてしまった、年齢的にシニアなプロダクトマネージャーです。
今年のテーマは「プロダクトマネージャーのキャリアパス」。プロダクトマネージャーの皆さん、製品ロードマップは描けても、自分のロードマップは描けていますか?
※おおげさなタイトルですが、所詮はおじさんPdMのポエムなので、あまり実用性は期待しないでください。
※おおげさなタイトルですが、所詮はおじさんPdMのポエムなので、あまり実用性は期待しないでください。
プロダクトマネージャーの「その先」にあるものとは?
現在、プロダクトマネージャーを務めている皆さん。
そして、これからプロダクトマネージャー職を目指そうとしている皆さんに質問です。
まだまだ会社ごとに違いはありますが、日本でもプロダクトマネージャー職の定義や役割に対する共通認識が形成されつつあり、大手 IT・ネット系企業を中心に求人も確実に増えています。
「業界で長年もがき続けた結果、気が付いたらプロダクトマネージャーをやっていた」おじさん世代の汗と涙と苦労をよそに(?)、あちこちから輸入されたフレームワークやスキル群を組み合わせて「知の高速道路」の建設が急速に進んでいます。その結果、プロダクトマネージャーになるための大まかなキャリアパスも、次第に見えてきたような印象があります。
しかし、プロダクトマネージャー職から「先」のキャリアパスを意識している方は、まだ少ないのではないでしょうか。
プロダクトマネージャー職は、キャリアのゴール地点とは限りません。
まだ歴史が浅い職種であり、周囲はおろか社外でもロールモデルが見つからないのが当たり前。そんな中で、将来自分がプロダクトマネージャーの「先」に進んだ姿をイメージするのは、とても難しいと思います。
ましてや、担当プロダクトのことを四六時中考え抜き、常に不確実性と向かい合うことを強いられる仕事です。「目の前の担当プロダクトだけでも手一杯なのに、自分のキャリアまで考える余裕なんてないよ!」などと愚痴のひとつもこぼしたくなるでしょう。
でも、「不確かな未来に挑む」という点では、プロダクト開発もキャリアパスも同じ。
そして、キャリアパスやロールモデルの問題は、業務経験年数が長い世代ほど、より喫緊で切実な課題です。ここはおじさんプロダクトマネージャーたちの頑張りどころです。
シャノンのプロダクトマネージャー陣はおじさんだらけですし。
シャノンのプロダクトマネージャー陣はおじさんだらけですし。
このテーマを考えてみようと思ったきっかけ
実は、このテーマを考えてみようと思ったのは、11月に開催された Product Manager Conference 2018 の参加者アンケートがきっかけです。
参加者アンケートの中に、こんな設問がありました。
個人的に結構しびれたアンケート設問 |
日本のプロダクトマネージャー界において、みんなが尊敬し、目標とするような「スター選手」って、誰でしょうか?
また、プロダクト名とのセットで世に広く知られているプロダクトマネージャーって、誰でしょうか?
私は結局「コレだ!」という回答を思いつくことができませんでした。
例えば、みんなが名前を挙げるであろう及川さん。プロダクトマネージャーの必要性を説くエバンジェリストとして大活躍され、私も心から尊敬しておりますが、プロダクトマネージャーの枠に括ってしまうことが憚られる「雲の上の存在」。もはや完全に別格です。
また、プロダクトマネージャー界で知られた人物の名前はいくつか挙げられますが、どちらかといえば監督やコーチのような印象で、スター選手 (=プレーヤー) のイメージとはちょっと違う気がするんです。
※実際にはプレーヤーとしても活躍されていると思うんですが、社外からだとイメージしにくいですよね
目標となる人物像がはっきりしていれば、現状 (As-Is) と理想像 (To-Be) のギャップは明らかにしやすくなるので、目標に至るまでのロードマップを描きやすくなります。
しかし、目標とする人物がはっきりしないと、理想像との間に横たわるギャップも不明瞭になりますから、自分の今後の成長ロードマップを描きにくくなるのは当たり前。
もし、私に限らず、多くのプロダクトマネージャーたちが今後のキャリアパスの不確実性に悩んでいるようであれば、それは憂慮すべきことではないでしょうか?
3つのキャリアパスを勝手に提案してみる
ゴールから逆算するという手法が使えないのであれば、仮説に基づいていくつかの道筋を引き、実際に試してみるしかありません。
現在のプロダクトマネージャーたちがこれから通る「けもの道」のいくつかが、次第にキャリアパスとして認知され、将来のプロダクトマネージャーたちが通る道になっていくのでしょう。
そして「けもの道」を開拓していくのは、おじさん世代の果たすべき義務でしょう。
※自分がその義務を果たせるかどうかは相当怪しいですが...
※自分がその義務を果たせるかどうかは相当怪しいですが...
まずは個人的な経験に基づき、プロダクトマネージャーのキャリアパス案として、以下の3つを勝手かつテキトーに提案してみたいと思います。
その1. 出世の道
エンジニアの場合、最近は以下のようなキャリアパスをよく見かけます。
- 技術寄り : Tech Lead → Chief Architect → CTO
- 組織寄り : Engineering Manager → VP of Engineering → CTO
これに倣うと、以下のようなキャリアパスが描けると思います。
- Product Manager → VP of Product → CPO (Chief Product Officer)
CTO や VPoE とともにプロダクト開発組織の「三役」を担う VPoP は、プロダクトマネージャーの上位職種と考えて差し支えないでしょう。また、会社によっては、さらに上位の CPO 役を置くことがあるかもしれません。海外の大手 IT 系企業を見ても、だいたいこんな感じの職階が組まれているように感じます。
これらの職種へのステップアップは比較的自然で、特に大きな組織体においては、プロダクトマネージャー職の経験者が歩む「王道」となるかもしれません。
※Head of Product や Director of Product Management, Group Product Manager などの肩書きも、類似職種と考えてよい...ですかね?
その2. 事業への道
プロダクトマネージャーの仕事を続けていると、プロダクト開発を超えた周辺領域まで手がけたくなる (or 自ら手がけざるを得なくなる) 機会に遭遇することがあります。
その結果、製品を包含するサービス全体のマネージャーに変わっていくケースが考えられます。
さらに、担当製品やサービスの売上・収益まで見るようになれば、事業部長のような事業責任者への道につながっていくでしょう。
- Product Manager → Service Manager → 事業部長 → 事業担当執行役
また、プロダクトマネージャーが持つ製品アイデアや解くべき課題が社内で解決できない場合は、独立起業という道も考えられます。
もともとプロダクトマネージャーは "mini-CEO" と評される職種ですし、スタートアップの CEO はほぼ例外なくプロダクトマネージャーとしての機能を兼ねます。よって、プロダクトマネージャー経験者が「自分の製品」を作るために起業するのは、極めて自然な流れだと思います。
今後、プロダクトマネージャー職の経験者が増えれば、スタートアップ予備軍が増えていくのかもしれませんし、プロダクトマネージャー職出身の有名起業家が増えれば、将来の起業を目指す層がプロダクトマネージャー職を志望するようになるかもしれません。
その3. 職人への道
ITエンジニアの世界には、周囲から "Geek" と評される職人・達人たちがいます。彼らは、ある特定分野において卓越した知識と技術を有し、周囲から尊敬を集める存在です。
ならば、プロダクトマネージャーにも "Geek" に相当するような職人・達人がいてもよいはずです。
また、プロダクトマネージャーたちの中には、「プロダクトを作り出し、ユーザーに価値を届ける」という行為自体に喜びを感じ、金銭的な報酬よりは愛と好奇心によってドライブされる層が存在します。彼らもまた、プロダクトマネージャーをキャリアの通過点とせず、「愛されるプロダクト」を作り続けることにこだわる、一種の職人・達人 (あるいは修行僧?) なのだと思います。
モチベーションの源泉は様々ですが、そんな職人・達人 (・修行僧) たちのことを、ここでは敬意を込めて "Product Guy" (仮) と呼びたいと思います。
いずれ、こうした "Product Guy" たちの中から、活躍の場を変えながら様々なプロダクトを世に送り出し続ける "Rock Star" 的なプロダクトマネージャーが出現するかもしれません。
今後、日本のプロダクトマネージャー界が "Rock Star" を多数輩出できれば、先述のアンケートでも様々な人物名が挙がるようになるでしょう。
他にはないの?
実はこれ以外に「4. 出戻りの道」と題して、プロダクトマネージャーになる前の職種に戻って専門性を発揮するキャリアパスもありえるかな~と思ったのですが、
- 一度プロダクトマネージャー職を経験してから、元の職種に戻りたいというモチベーションは働くか?
- 元の職種に戻ったとき、プロダクトマネージャー職での経験は活きるのか?
という2点がイマイチしっくりこなかったので、いったん候補からは外しました。
それでも、「やっぱりコード書きたい」とか「やっぱりUX突き詰めたい」とか「やっぱりグロースハック極めたい」という選択肢があってもいいんじゃね?...というのが私の意見です。
これまでの経験からざっくり考えた3案ですので、まだ他にあるかもしれません。
さて、自分はどの道を進む?
海外のプロダクトマネージャーたちは、いくつもの会社を渡り歩きながらプロダクトを手がけたり、自分のプロダクトで独立起業するほか、プロダクトマネジメント界隈のエバンジェリストやコンサルタントに転じる方も多いようです。
私の周囲のプロダクトマネージャー経験者は、大きな組織で事業責任者や製品開発責任者に転じるケースが多く、独立起業に至るケースはごくわずかです。
そして私の場合、スタートアップで働いた経験が何度もある関係で、昔の仲間からは絶えず「起業しないの?」と聞かれます。でも、私はあまり頭がよくないので、今のところ「人生を賭けてでも解きたいほどの課題」を見つけられていません。
まだしばらくの間は、愛と好奇心を原動力に、人々から愛されるかもしれないプロダクトを作り続ける "Product Guy" を目指して精進を続けたいと思います。
皆さんはこれから、どんなキャリアパスを歩みたいですか?
年末年始の機会を利用して、ぜひ考えてみてください。
おまけ:愛で測ろう
そういえば、Product Manager Conference 2018 のテーマは「愛されるプロダクトを創ろう」でした。
皆さんが担当しているプロダクトには、いろんな KPI が設定されていると思います。
新規顧客獲得数、DAU や MAU、継続率、売上、利益...。
新規顧客獲得数、DAU や MAU、継続率、売上、利益...。
でも、「愛」はどうでしょうか?
ユーザーから、社内・関係者から、あなたのプロダクトは愛されていますか?
そして何よりも、あなた自身がプロダクトと、その先にいる人々を愛していますか?
ちょうど年末ですし、ミュージカル「RENT」の名曲 "Seasons of Love" に乗せて結びたいと思います。
"Measure Your Product in Love."
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